こんぺいとうあつめ

好きなゲームや本(マンガ/漫画アプリ含む)などの話を一口ずつ。ゲームはアクションRPG, パズル, カードゲーム系が中心。

もしもこの、いわゆる開発途上国でゲームが広まるとしたら

 

私が住んでいる地域は、カンボジアの中でも田舎です。ドを付けてもいいくらい。
日本の友人知人に対してそのことを端的に表したいとき、以下のようなエピソードを話します。

  • 空港のある首都プノンペンから、車を 80mph (マイルだぞ、マイル)*1ですっとばして 5~6 時間かかる。
  • 移住 3 か月目にしてお店でキッチンペーパーを見つけ出し、心から感動した。ちなみにラップやアルミホイルは未発見。
  • 小麦粉やチーズ、バターが欲しければ、隣の州までバスで行く必要がある。

中でもよく使うのは、

  • 家の住所があやふやで、郵便番号すら振られていない

ということ。

家の前を走るストリートの名前をお隣さんに聞いても、「さあ…?」という反応。大家さんはこのあいだ「番地...? 何だったかな、書類確認しとくねー」と言ったきり。船便や EMS を含む郵便物を受け取るには、郵便局に私書箱を開設しておかなければなりません。

しかも EMS 以外はプノンペンからの道中でよく紛失するらしく... と、だいぶ脱線してきたので話を元に戻します。

郵便制度とか、テレビとか

日本には当たり前にあるシステムが、この街にはすっぽり欠けています。

郵便制度はまだまだ不便で、多くの家庭がテレビを買えるほど裕福ではない。

それじゃあ、あと何年か経って、いわゆる発展というやつをこの国が成し遂げたら、手紙は各家庭に直接届くようになって、一家に最低一台のテレビが置かれるようになるんだろうか?

私は、そうは思わない。

だってもう皆スマホ持ってるし

固定電話を引いている家庭や仕事場もほとんど無い。携帯電話、というかスマホで用は足りるし、わざわざ高い工事費と月額料金をつぎ込む意味が無いからだろう。

カンボジアのスマホは、音声通話とデータ通信に使う (使った) 分だけチャージする方式。専門のお店... といっても街のそこら中にあるんだけど、そこで「1ドル」「5ドル」等々手ごろな額のスクラッチカードを購入し、書いてある番号を入力すれば使えるようになる。それ以外の、例えば月額基本料金みたいなものは無い。
最近はカード無しで入金できるアプリ↓も登場していて、私はこれを使っています。チャージが切れそうな頃合いを見て追加したり、切れた後でも WiFi 経由でチャージしたり。(注: カンボジア国内限定アプリです)

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テレビにも、少なくとも今 10 代、20 代の子たちが興味を惹かれるかは疑わしい。すでにほとんどの人が、スマホで YouTube の動画を見、音楽を聴いているからだ。

ビジネスの現場でもそうだ。商品や製品を顧客に届けるための物流機構はいずれ整備されるだろうけど、どこのオフィスにもとっくにパソコンがあり、メールで何不自由なくやりとりできる環境で、どれだけの人が紙の手紙のネットワークを求めるだろう。

開発途上国の通る道は、先進国のそれと同じではない

日本で郵便制度が欠かせないものであったのは、無線通信が、WiFi が、ケータイが、無かったからだ。
手書きの温かみ、みたいな話もあると思うけれど、ここでは置いておく。あくまで技術開発の話だ。

日本でテレビが普及していたのは、スマホが、タブレットが、動画視聴サイトが、無かったからだ。

この国には、後者の技術が先に来た。そしてそれらが土台になる。築かれていくシステムは、私が私の国で見ていたものと、似て非なるものになるはずだ。

ゲームの文化は根づくだろうか

率直に言って、それを自分が心配しても仕様がないと思っている。私は一介のゲーム翻訳者だ。

ただ、もし根づくとしたら、格ゲー、アクション、RPG、経営戦略... 要は 1 回あたりある程度の時間をかけて、じっくり楽しむゲームがまず主流になるのではと思う。

移動中の隙間時間をぽちぽち埋めるようなパズル、他プレイヤーから突然宣戦布告されるような MMORPG は、上に書いたようなスマホ事情に鑑みると難しい。

パズルゲームをしていて、いざハイスコア更新という局面で残高がなくなり通信が途絶えたら嫌だろう。誰だってストレスが溜まる。
私も、街なかでうっかり Pokémon GO を開いてしまい、一瞬にしてチャージ金額がゼロになった経験がある。
日本でこれらが成立しているのは、データ通信の定額サービスが基本にあるからだ。

(私は今のプログラミング技術に詳しくないので、通信量を極限まで抑えてこのあたりをクリアする手段は、ひょっとしたらもうあるかもしれません。その場合はごめんなさい。)

そしてもう一つ、カンボジアでゲーマーを増やすのに障害になりそうなことがある。

インフラストラクチャ

ここまでゲームやらインターネットの話をしてきたけれど、この「インフラストラクチャ」は、本来の、もっと原始的な意味だ。

電気。

カンボジアは停電が多い。停電といっても、3 か月間住んだ印象から言えば「電力の瞬断」が多い。私は基本的に一日中、家でゲームかゲーム翻訳をしているけれど、デュアルにしている中のサブ ディスプレイが、週に 1 回あるかないか、ぷつっと暗転する。

仕事、つまり翻訳をしている最中なら、メインのノートパソコンに画面を切り替えれば問題ない。少なくともこれまでは、ノートパソコンのバッテリー切れより電力復旧のほうが先だった。

困るのはゲームの時だ。ライネルやらガノンやらに「うおぉぉ!」って意を決して突っかかっていこうとした瞬間、ふっつり視界が途絶えてみ? あああああ!ってたぶん絶叫する。ニンテンドースイッチならおそらく構造的に、自動的にテレビモードに切り替わるのだと思うけど、体勢を立て直す間にだいぶリンクはボコられる。
他のアクションや格ゲーにとっても、不安定な電力は悲劇を生む。しかもこれが他の据え置き機だったら、本体自体の電源が切れる。ゲームの進行は、今はオート セーブがほとんどだから被害は少ないだろうけど、機械的にはいきなりコンセントを抜いたのと同じことだ。控えめに言っても良いことじゃない。

UPS という手もあるけれど、一番無理がないのは、もともとバッテリーを備えている機器を利用してもらうことだろう。

つまりノートパソコン、スマートフォン、タブレット。...なんだか話が戻ってきた。

今後注目のプラットフォーム

マイクロソフト社なんかは、Xbox のゲームを Win 10 パソコンでも遊べるようにしたり、タブレットでコンソールと変わらないクオリティーのゲームを提供しようとしたり、しているみたいだ。(どこかの記事でそう読んで、今検索してみたんですが見つかりませんでした。)

当該企業のこうした取り組みは、ユビキタスなユーザー体験を届けようというのが主要動機だろうけど、ゲームもできる PC が増えたり、タブレットでもコンシューマ並みのボリュームを持ったタイトルが遊べたりしたら、この地方に住む人々の娯楽の中に、「ゲーム」はいち選択肢としての地位を確立できるだろう。*2

自分でも今後は、PC 配信 (Steam や Win 10 ストア) ゲームにもっと目を向けていこうと思っている。もちろん引き続きスマホ アプリのゲームも見ていきますよー。それと PS4。停電に関しては上のように書いたけど、VR のプラットフォームとして、無視するわけには行かないからねっ。

*1:換算すると時速 130 km 弱

*2:ただ、できれば「ゲーム」ではなく、最初から「e-Sports」として広まってくれないかなあ。「暗いオタクが部屋で一人ひきこもってやるもの」「現実離れした、なんだか異常なもの」というイメージが先行したせいで、日本のゲームはだいぶ苦労してきたし、今後も落とし穴がいくつもあるだろうから。